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長寿で子だくさん 徳川家康が頼った漢方薬

読売新聞(Yomi Dr.コラム)

獨協医大・越谷 講師 小堀善友

先日、石井クリニック(さいたま市浦和区)院長の石井泰憲先生より面白い話を伺いました。
中高年のアンチエイジングに役立つ漢方薬として知られている「八味地黄丸(はちみじおうがん)」。なんと、あの徳川家康が愛用していたのだそうです。彼が75歳まで長生きができた理由の一つとして、この漢方があったのではないのかと思いました。

確かに、家康の75歳は、平均寿命が40歳程度だったとされる時代背景を考えてみると際立っています。戦国時代の大名の寿命と比較してみても、武田信玄や豊臣秀吉、伊達政宗ら多くは50歳代から60歳代で亡くなっています。織田信長は「人生五十年」と言っていましたから、その1.5倍ですよね。激動の時代に徳川幕府の基礎を築いたのは、自ら健康に注意し、長生きできるように努めた、たまものであるとも考えられています。

オットセイの精力

年を取ってからの家康は運動(タカ狩りに夢中)を欠かさず、食事にもいつも注意していました。そして、中国の薬学書の本草綱目や和剤局方などを読んで薬を調合し、自分で服用していたそうです。

その基本の薬が「八味地黄丸」というわけです。八味地黄丸の変方に海狗腎(かいくじん)を加えた処方を特に愛用し、薬箱の8段目に入れていたので、この薬は「八の字」と俗に呼ばれていたようです。ちなみに、海狗腎というのは、オットセイのペニスと睾丸(こうがん)のことです。オットセイのオスは20~30頭のメスと1か月あまりも何も食べずに交尾をすると言われており、その精力の強さから漢方薬によく使われています。

現代でも処方されます

八味地黄丸は漢方の専門用語で言う腎虚(体力低下、冷え、下半身の衰え、臍下(せいか)の腹部軟弱)の薬です。この薬は胃腸が弱くなければ、中高齢者には有効であると考えられています。

また、八味地黄丸は泌尿器科の老化性病気にもよく効きます。例えば、前立腺肥大症による排尿困難や、頻尿を改善するのに効果があることが確認されています。ちなみに、テレビのコマーシャルでよく流されているドリンク剤の「ハルンケア」は八味地黄丸を液状にしたものです。

家康は子だくさんでも知られます。この当時は子どもの死亡率が高かったので、子どもをたくさん作ることがお家繁栄に不可欠でした。八味地黄丸は男性の不妊症患者さんに、精子の運動率をあげるために現在でも処方されています(実はエビデンスははっきりしていないのですが)。

まとめると、八味地黄丸は老化による腎虚で生じる腎炎、頻尿、前立腺肥大症、座骨神経痛、高血圧、糖尿病、EDなどに有効とされています。ただ、効果は個人により一定ではありません。
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