2009/07/09
私は去年の7月に泌尿器科を北浦和(西口)駅前で開業しましたが、開業早々、19歳と20歳の若者が連れ立って神妙な顔をして受診して来ました。「尿道から分泌物が出ているみたいで、下着が汚れるし、尿を出す時、痛みがある」とのこと。「変なとこに遊びにいったのではないの?」とよく話を聞くと、「2日前にファッション・マッサージに遊びに行ってきましたが、オーラルセックスだけで、性行為まではしてないのに、変な病気がうつされたのかな?クラミジアかな?心配だから先生検査してください」という。「これは、淋病だろうから、飲み薬じゃなくて、注射が必要なので打とう」とロセフィンを静脈注射しました。(2日目には症状が消失したそうです)。早速、検査をしてみると、淋菌が検出されました。検査した薬剤の感受性試験では、ニューキノロン系、ペニシリン系、セフェム系の経口抗菌剤には全て耐性を示しました。
注射薬のロセフィンは感受性がありました。
今や、淋病は経口薬では治すことができにくい難治性の疾患になってきたことは、意外と知られていません。淋菌は15年前までは、ほとんどの抗菌剤が有効でどの薬剤でも治すことができました。しかし、日本では最近の10年で、ペニシリンは100%効かなくなっていますし、ニューキノロン系は80%が耐性で、セフェム系もこの2年で50%以上が耐性な淋菌になってしまいました。有効な薬剤はロセフィン(セフトリアキソンナトリウム)など2つの注射剤しか、確実に有効な治療薬がありません。
※画像をクリックすると拡大表示されます。
日本性感染症学会では従来の経口薬に代わり、注射薬を中心にした治療法のガイドラインに改正する方針とのことです。性生活が乱れてきた昨今、正しい治療法が普及しないと、大流行を起こす可能性があり、危惧されています。
※画像をクリックすると拡大表示されます。
また、性風俗も性交でなく、オーラルセックス中心のファッション・マッサージが盛んなようです。淋菌感染は女性の咽頭に感染巣があり、オーラルセックスにより男性の性器に感染します。神奈川県のあるファッション・マッサージの一番人気の売れっ子のヘルス嬢は1日で50人のお客さんの相手をするそうです。彼女が喉に耐性淋菌をもっていたら、あっという間に広がってしまいます。当クリニックでの男性の若者の淋菌感染はほとんど経口感染です。経口感染は経膣感染より行為が簡単で、危機意識を持っている人が少ないので、われわれは、もっと経口感染による耐性淋菌感染の恐怖について声を大きくして啓蒙する必要があると思います。
このように、排尿日誌から排尿状態を読み取り、さらに検査値や年齢、既往などからOAB症状の原因を探ることが重要となる。そうして個々の患者にあったオーダーメード治療の工夫をすることで、良い結果を得られるものと考える。